梅咲けば、桜 2 (スティーリー・ダン : Steely Dan) [3/3]
このアルバムのライナー・ノーツを書いた当時は、サッカーの事以外の南米の文化や事情にほとんど無知で、ジャケットに使われている絵が、タンゴを踊っているであろう男女を描いたものであるのは歴然としているのに、何も触れることが出来なかった。 |
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後で知ったのだが、ガウチョというのは、都会に仕事を求めに来た地方の牧童、つまり、田舎のカウボーイ達。 急増したイタリアやドイツなどヨーロッパからの移民や、アフリカから奴隷としてつれてこられた黒人の子孫たちともども、ブエノスアイレスやモンテビデオの長屋に住み、うっ屈した気持ちを、激しい音楽と荒々しいダンスで晴らしていたらしい。 |
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アフリカ黒人の激しいリズムに乗る踊り“カンドンベ”が、その18世紀後半に流行っていて、その影響が、タンゴの原点になっているのだ。 アース・ウィンド&ファイアーの「太陽の戦士」は、さしずめ、100年後のカンドンベ曲だったのかもしれない。 多少ひねくれ者だが、もの凄く知的で、高度な音楽知識を持つドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの二人から成るスティーリー・ダンは、『ガウチョ』で、直接タンゴ的な音楽をやっている訳ではないが、当時の都会の中の孤独な異邦人たちの姿と気持ちを見事に描いている。 もうひとつのタンゴの姿を、僕に教えてくれた。 |