音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

梅咲けば、桜 2 (スティーリー・ダン : Steely Dan)[2/3]

今でも、そのエレガントなイメージは尾を引いているが、ネオなアルゼンチン・タンゴのバンドの演奏を聴く機会が増えた70年代以降、意外とビートのアタックの強い激しい音楽だなあ、という印象が強くなってきた。

 そして、サンタナやWAR(ウォー)といったラテン要素の強いロックやファンクのバンドのライヴを観て、その演奏の中にタンゴの風味を感じ取るようになり、決定的になったのは、アース・ウィンド&ファイアーの「太陽の戦士/Serpentine Fire」を聴いた事だった。

タンゴというものは、意外な浸透力で、普段よく聴いているポップ・ミュージックの中に入りこんでいて、そのビートと空気感を、実は自分がとても好きなんだ、とやっと理解し始めたのである。

 もうひとつ、自分の“タンゴ好み”が、少し歪んだ形で理解させられた作品がある。

スティーリー・ダンの1980年のアルバム『ガウチョ/Gaucho』だ。