音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

そしてオッケー! O.K! また、O.K! (ソウル・トゥ・ソウル : SOULⅡSOUL)[3/3]

 帰国して聴いたSOULⅡSOULは、すぐにはうまく説明できないレゲエのヴァリエージョン・リズムを基調にしたサウンドで、不思議に惹かれるものがあり、深夜のFMで何曲かかけていたのだが…約半年後、全米アルバム・チャートを駆け上り、とうとう首位に昇る超話題作。

回りでも騒ぎ出し、忘れた頃に日本盤も大急ぎで発売され、僕は、その時になって、モップ頭の男が、プロジェクトの中心人物ジャジー・BというロンドンのクラブDJであったと知った。


歌は唄えない、楽器も弾けない、というジャジー・Bが、しかし、その卓越した耳と知識を武器に、適材適所のミュージシャンを集め、頭の中に浮かんでいる自身の音楽を作り出したプロジェクト手法の作品は、今では当たり前だが、20年前の当時では実に斬新なものだった。

そして、彼の編み出したレゲエのヴァリエーション的リズムは“グランド・ビート”と命名され、90年代の大きな潮流となる…


デジタルのダウンロード全盛の現在、ロンドンの下町で“視覚”でみつけたレコードを思い出すと、やはり、音楽は音だけではなく、目に入るものや手触りやにおいも携えており、それに影響されもする、と痛感する。

これがある限り、僕は、配信だけで音楽を手に入れようとは思わない。

SOULⅡSOULの作品 (Liner notes)

ソウル・トゥ・ソウル (SOULⅡSOUL)のイメージ3

『Club Classics VOL.One (キープ・オン・ムーヴィン)』 SOULⅡSOUL

(輸入盤 TEN DiXCD 82、
日本盤 Virgin/EMI VJD-32239:'89年)