音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

梅咲けば、桜 (アース・ウィンド&ファイアー : EW&F)

2011.02.01

 アース・ウィンド&ファイアー(EW&F)は、シカゴ出身の黒人グループで、70年代初頭に結成された。

リーダーのモーリス・ホワイトはグループのリード・ヴォーカリストだが、元々ドラムスとパーカッションの奏者で、シカゴの先輩で、ジャズ・ピアニストのラムゼイ・ルイス・トリオでドラムスを叩いていた人だ。

僕が高校生の頃、そのラムゼイ・ルイス・トリオが「ジ・インクラウド」と「ハング・オン・スルーピー」という大ヒット曲を放ち、そのビートがロック・ビートで、ロック・ファンの支持を得たものだから、正統派のジャズ・ファンから、あんなのジャズじゃない、と非難を浴びていたが、そんなのおかまいなしのマイ・ペースで独自の“ジャズ・ロック”を続けていた。

通っていた高校が近かったものだから、昼休みに自宅に帰って昼食をとるのを常としていた1966年頃、ちょうど昼時のNHKテレビの番組に、来日していたラムゼイ・ルイス・トリオが出演していて何曲か生演奏した。

ラムゼイの、ソウルフルでファンキーなピアノ・プレイもさることながら、僕が昼食の箸を止めて半ば茫然として目と耳を奪われたのは、若き日のモーリス・ホワイトのドラミング。

ビートルズやストーンズで聴き慣れているロックのオフ・ビートでドラムスを叩いているのは確かだが、そこに様々な聴き慣れない変拍子のビートが加えられたスタイル。

それは、モダン・ジャズの、例えばアート・ブレイキーの手数の多いアフリカン・ビートも取り入れたスタイルとも違い、とてもポップで親しみ易いものであると同時に、それまで全く聴いた事のない斬新さを持っていた。

現在の感覚で言えば、エスニックで、ワールド・ミュージックのビートを携えたロック・ビートだったのだろう。

 まさか10年後に、その斬新なドラマー、モーリス・ホワイトに、彼が率いるグループEW&Fについてインタビューしたり、解説を書いたりする身になるとは、想像もしなかった。