音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

梅咲けば、桜 (アース・ウィンド&ファイアー : EW&F) [2/2]

初めてモーリスにインタビューしたのは、1977年の暮、アルバム『太陽神/ALL‘N’ALL』が発表される直前だった。

半年程後の'78年夏に、このアルバムから「Fantasy(宇宙のファンタジー)」という大ヒット曲が生まれ、折からのディスコ・ブームにも乗って、このアルバムは、EW&Fの歴史の中でも一番のセールスを上げる代表作となった。

特に、日本や南米諸国では空前のヒット作となって、EW&Fと聞けば、このアルバムと、「宇宙のファンタジー」と、ピラミッドをモチーフにしたジャケットのイラストを思い浮かべる人が圧倒的に多いと思う。

 しかし、僕にとっては、本国アメリカで最初のシングルとなった巻頭の曲「Serpentine Fire(太陽の戦士)」の印象が強烈だった。

ポジティヴで宇宙的な歌詞とヴォーカル・ハーモニー、ダイナミックなホーン・セクションの音など、既におなじみとなっていたEW&Fの特徴を全て持ったブラック・ファンクな曲なのに、どこか斬新な試みがある…どこだろう?と考えている内に、ふと10余年前にテレビで観たラムゼイ・ルイス時代のモーリスがくり出すビートを思い出したのだ。

インタビューの機会を得た時、真っ先に「太陽の戦士」の、当時のブラック・ミュージックの、特に大型ファンク・グループの型にあてはまらないリズムについて尋ねた。

 モーリスは即座に答えた。

「君は…タンゴを好きかい? きっと好きなんだろうね。あの曲のビートは、タンゴ、なんだ」


 僕の中で、タンゴ(Tango)に対するイメージが大きく変わった瞬間だった。(続く)

EW&Fの作品 (Liner notes)



『太陽神/ALL 'N’ALL』