音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Sheet Music. その6

2015.12.25

(前回から続く) レイ・チャールズを始めとする1950年代のアメリカのソウル/R&Bアーティストに憧れてシンガーになったというジョー・コッカー(Joe Cocker)は、'60年代から'70年代のバンド・ブームの中では珍しいソロ・ヴォーカリストのスターだった。

当時の十代の少年達は・・・僕もそのひとりだが・・・ビートルズ・ショックを完全に引きずっていて、ジョン・レノンのように、ギターをかき鳴らしながらリード・ヴォーカルをとるのが最高にかっこいいと思っていた。

やはりビートルズ・ショックからグループ・サウンズを結成した人達が、毎夜、TVのゴールデン・タイムの歌番組に登場してもいたので、そのヴィジュアルの影響もあったのだろう。

 ローリング・ストーンズのミック・ジャガー(Mick Jagger)を始め、沢田研二(タイガース)やショーケンこと萩原健一(テンプターズ)など、両手に楽器を携えず、歌だけで勝負する大スターもバンド・ブームの中には沢山いたが、やはり、マッシュルーム・カットの髪にギターを持つ、というのが人気の中心だったと思う。

バンド・ブーム(日本ではグループ・サウンズ)からニュー・ロック/アート・ロックの時代に移行し、ミュージシャンの髪は更に長くなり、両手であやつる楽器は、ギターからキーボードに、主役の座も移っていった。