音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

太陽の戦士たち.(その3)

2015.10.02

(前回から続く)アース・ウィンド&ファイアー(以下EW&Fと略)のオリジナル・アルバムやライヴ・アルバム、未発表曲入りのベスト・アルバムをトータルすると、各国によって、事情や編集の差異があるので正確には言えないが、大体のところ、17作品から20作品、存在する。

亡くなった長岡秀星(ながおか しゅうせい)が、見事に、金色に輝くピラミッドを描いたジャケットを纏った『All'N'All(太陽神)』は8作目だ。

ちょうど山の中腹にさしかかった登山家が、一息つき、そこから一気に頂上に向かい到達したような勢いとエネルギーが、楽曲にも演奏にも感じられる。

活動期前半の7作品にも、例えば6作目の『That's The Way Of The World(暗黒への挑戦)』('75年)とか、'70年代半ばのレベルを考えると、驚異的な演奏力と仕掛けや演出の模様を記録したライヴ・アルバム大作『Gratitude(灼熱の狂宴)』('75年)といった傑作もある。

しかし、ジャズやポップス、ロック、そして、ファンクやソウルが混じり合ったクロスオーヴァー・ミュージックの時代と盛んに騒がれ報道されていたちょうどその時代に現れた『太陽神』ほど、その時代観を見事に実証していたアルバムは無かった。

他のアーティストの作品を考察しても、これ程見事なクロスオーヴァー・カルチャー・ミュージックの完成型は、ちょっと見当たらない。まさに大傑作だった。