音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

太陽の戦士たち.(その2)

2015.08.24

(前回から続く)アース・ウィンド&ファイアー(以下EW&Fと略)が結成されたのは1969年。

当たり前の事だが、シックスティーズ('60s)がセヴンティーズ('70s)に換わる時で、一般的には単なる時代時間の節目かもしれないが、カルチャー、特にサブ・カルチャーにとってはもの凄く大きな変わり目の年で、今思い出しても、ゾクゾクするような面白くてエキサイティングな年だった。

ビートルズという'60sの象徴が解体し、そのビートルズ末期の実験的な試みを拡大したような姿勢を持つロック・バンドがどんどん現われ、それに刺激されたジャズやクラシックのミュージシャンたちも、それまでの形式や手法にとらわれない試みを争ってやり出していた。

 EW&Fのリーダーであるモーリス・ホワイト(Mauris White)も、その'60s後半のニューロック/アート・ロックの大きな波に大変な刺激を受けた20代半ばの若者だったのだろう。ジャンルの壁を越えた新しい黒人バンドを作ろう、という意気ごみが、EW&Fという当時としては黒人バンドらしくないバンド名にも表われているし、そこには、末期ビートルズ的な実験性、少し先輩の黒人革命派音楽家であるスライ・ストーンのスライ&ザ・ファミリー・ストーンの奔放さから受けたショックと刺激が、明らかに表われていた。

しかし、意気ごみが強すぎたのか、'70年代前半のEW&Fの作品には、いまひとつ面白さが欠けていたように思う。

それでも、演奏能力の高さやライヴ・パフォーマンスの凄さが貢献したのか、あるいは、コモドアーズやクール&ザ・ギャングといった大型ファンク&ディスコ・バンドのブームに便乗する事もあったのか、黒人音楽ジャンルではトップ・クラスの人気バンドになっていった。