音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

太陽の戦士たち.(その1) [2/2]

 ジャケットのデザインは、古代エジプト王朝の残した遺跡で、あまりにも有名なスフィンクスの向こうに神殿が、そして、更に向こうにピラミッドが輝く、というイラストが、真正面の視点から描れたもの。

これまた遇然だが、訃報を載せた同じ新聞の新聞社とNHKプロモーション、東京国立博物館が主催する『クレオパトラとエジプトの王妃展』という展覧会が7月から始まるという事で、古代エジプトのこうした画像が、新聞紙面やテレビで報じられるのを何度も観ている時期でもあった。

そのつど、頭の中で、EW&Fの『太陽神』の中の「宇宙のファンタジー/Fantasy」や「太陽の戦士/Serpentine Fire」が鳴り渡り、懐かしくなって、引っ越し荷物から大急ぎでオーディオ類を引っ張り出し、なんとかセットして『太陽神』を聴いた。

このアルバムをフルに聴くなんて久しぶりの事で、全く予想していなかった。これも、虫の報せ、というものだろうか?

古代エジプトの披露されていない宝石宝飾類まで動員した『王妃展』への出品物は、パリのルーブル美術館を始め、ボストン、大英、ベルリン等に点在しているものを徹底的に集合させた労作展で、現在の東京の情報収集力と文化輸入エネルギーが無ければ、簡単に実現しないものである事は、僕にさえ解る。

特別に紀元前のエジプトが再注目され、ブームになっている訳でもない時期に、よくぞそんな秘宝展が実現したものだ、と企画した関係者の方々に敬意を表したい。

そして、また、よくぞそんな時期に長岡秀星は永眠したものだ、とそのタイミングの妙に、少なからず鳥肌がたってしまった。

 1970年にアメリカへ渡り活動していた彼が、どういう縁か、EW&Fが大きなチャレンジを目指し成功させた『太陽神』のジャケットを手懸ける事になったのか、更に、アルバムのサウンドの衝撃等についてはこの後で。(次回へ続く)