音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Fame. その5

2016.06.12

 (前回から続く)デヴィッド・ボウイの映画への興味と探究心を研究する人なら誰でも、アルバム『ステイション・トウ・ステイション』(1976年)を代表的な“映画的アルバム”として挙げる。

ヤング・アメリカンズ』('75年)という世界的な、特にアメリカ市場での大ヒット・アルバムを産んだ後に、いきなりステージからの引退宣言を発表し、実際、ライヴ・ステージに立たない何年かが続いた。

ロック・スターよりも映画スターになりたいボウイ、といった見出しが音楽誌にあふれ、僕も、FM誌で、映画界に近づき、自からの企画を進めたり、映画プロデューサーや監督、脚本家達と交流を深めているボウイの特集記事を'76年に書いた事をはっきり覚えている。




 様々な映画の噂がとび交う中、ナチスによる英国首相チャーチルの暗殺計画を描いた『鷲は舞いおりた』の主演候補になった、というニュースをローリング・ストーン誌で見たが、しばらくすると、その主役をロナルド・サザーランドに取られた、というニュースが、同誌や、『スクリーン』等の日本の映画雑誌に載っていて、ボウイがかなり落ちこんでいるというのが、音楽好き仲間の一番の話題だった。