音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Fame. その28

2017.12.30

 (前回から続く)

 11月の下旬のある夜、久しぶりに六本木の夜の道を歩いていた。知人のジャズ・アーティストのライヴが小ぶりのクラブで催されるというので、それを取材に行く為だった。

 東京ミッドタウンの巨大な開発ビル群ができてから六本木の街もかなり変貌して、年の瀬が近くなると、イルミネーションと各種クリスマス装飾の嵐の様で、おしゃれなバーやレストランの戸が開くと、必ずといっていい程、クリスマス・ソングが店内から街路に流れてくる。

さすがに、渋谷や新宿の街中とは違って、扉が開くと、山下達郎の「クリスマス・イヴ」や、訳の解らないJ-POPの歌手の英語の愛の言葉がリズム合わせにやたらと登場する街の騒音に比べればマシだが、大して変わりない。

いずれにしろ、この暮の季節の、一見きらびやかなサンタクロースの氾濫には、どうしても、いまだ慣れない。

クリスマス直前には自分の誕生日もあり、クリスマス・ケーキに限らずケーキは大好きで、ラジオのスタジオにすらケーキが用意されていて、それは大歓迎なのだが、ひねくれ者なのか、この季節は、家で、マイルス・デイヴィスの『イン・ア・サイレント・ウェイ』でも聴きながら、餅を食べて、さて、今度のお正月にはどんなレコードを最初に聴こうかな…と思いながら、神檀に供える用途の常緑樹の葉をいじっている方が好きだ。