音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Fame. その19

2017.03.15

 (前回から続く)       

 キューバ革命が成功したのは1958年の事だった。そのニュースは、まだ小学生だった僕でも知っていたが、キューバとアメリカ合衆国との間の複雑な対立や、それ以前のキューバが、特にアメリカ人にとって最高のリゾート地であった事、革命の英雄はフィデル・カストロであり、革命闘争の主役はカストロの盟友で副官的存在だったチェ・ゲバラであった事など、詳しい事実は全く知らなかったし、たとえ知ったとしても、理解できなかっただろうと思う。

以前にも、この「Fame」連載の中で書いたが、その1958年という年は、イギリスで、ワーキング・クラスの若者が、既成の文化とは異なる文化、つまりサブ・カルチャーとかモッズ革命(Mods Revolution)と呼ばれる事になった文化革命を起こし始めた年。

映画『ビギナーズ』で重要な役を演じたボウイにとっても、キューバ革命成功のニュースは、モッズ革命にとって大きな刺激になったという記憶と思い入れがあったと思う。

 しかし、近年、キューバ革命の英雄であり、その後21世紀に入っても英雄であり続けたカストロが、実は英雄であり続ける為の巧みな演出家であり策士であったという裏の事実がどんどん明るみに出るようになった。

もうひとりの英雄ゲバラは、純粋すぎる程の民衆革命家という思想を押し通し、キューバ以外の途上国の革命に参加し、若くして南米の地で散った。