音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

魔女たちのジグソーパズル2 (ディープ・フォレスト) [3/3]

 この前も後も、ミッシェルとエリックのふたりは、ワールド・ミュージックのフィールドでその専門家として捉えられる事も多かったが、両者はともにシンセサイザーやコンピューター機器の達人で、その相反する要素を背負って音楽を創ってきた。

ディープ・フォレスト(Deep Forest)のイメージ6

ミュージシャンとしてのスタート時点から、ボヘミアンであると同時に、ハイテクノロジーマンだった訳である。

時として、その自分の中の矛盾するふたつの要素に悩むことはないか? とインタビュー時に質問したことがあるが、ふたりはそれこそが音楽への衝動だと考えることにしている、とまるでうち合わせをしたように答えたのが忘れられない。

そういえば、『ボエム』の中の「ボヘミアン・バレー」の他に、「コーラル・ラウンジ」や「ホワイル・ジ・アース・スリープス」といったディープ・フォレストの曲が使われている映画『ストレンジ・デイズ』が、同じ'95年に公開された。

今ではすっかり有名になったジェームス・キャメロンがストーリーを書きプロデュース。キャメロンの元妻キャスリン・ビグローが監督した近未来映画。

'95年時点で2000年のアメリカの都市を描いているのだが、人間の眼が、現在の携帯電話のムービーの様に、見たものを録画してしまい、それが生む犯罪が恐く、哀しかった。

そこに、ある種懐かしく、ある種最も新しかったディープ・フォレストの音楽がすっぽりとはまっている。

ボヘミアンは、どんな時代にも存在している、と言っているかのように。

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