音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

そしてオッケー! O.K! (ジプシー・キングス : Gipsy Kings)

2010.12.1

ジプシー・キングス (Gipsy Kings)のイメージ1Left

 1989年の4月初め、ロンドンに取材へ行った。

洋楽を、職業的にも好んで聴いていると、ロンドンは、文化の発信地として最重要な都市のひとつで、取材に出向く機会は、少なくとも90年代半ばまでは、多かった。

その時の取材も、フランスでセンセーションを巻き起こし、ヨーロッパ大陸各国で「バンボレオ」や「ジョビ・ジョバ」を大ヒットさせていたジプシー・キングスが、いよいよポップスのメッカ、ロンドンに乗りこんで、ロイヤル・アルバート・ホールでコンサートを貫行するという瞬間を観ておきたいという目的のものだった。

実際、エルトン・ジョンを始めとしたロンドンのVIPがじっと見つめる中、歴史あるホールのほとんどの観客を立ち上がらせ、最後には踊らせてしまったジプシー・キングスの熱と勢いには素晴らしいものがあった。

ラテンに限らず、先進国以外の第三世界に根ざすエスニックなワールド・ミュージックが、90年代の音楽をリードしていくだろうとBBC放送の記者が、ホールの廊下で興奮しながらカメラに向かって喋っているのも印象的だったが、確かに、その後の時代を思い出してみると、その通りになった。

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