音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

そしてオッケー! O.K! (ジプシー・キングス : Gipsy Kings) [2/3]

ジプシー・キングスは、その頃既に、定住地を持たず放浪するイメージの強い“ジプシー”という言葉が差別語であるという世論が世界的に巻き起こっている中で、わざわざジプシーをグループ名に冠している点でも、僕は注目していた。

ジプシー・キングス (Gipsy Kings)のイメージ2

元々は、インドの民族が北上してヨーロッパ大陸で生活するようになったのが、ヨーロッパの人達が、エジプトからの労働移民と混同して「あれはエジプシャン(エジプト人)だよ」と呼んでいる内に、エジプシャンがなまってジプシーと呼ばれるようになったという。

今では、その起源のインドのロマ族を強調して、ロマの人、と呼ぶのが正式らしいのだが、長年親しんできたジプシーという呼び方を変えている人には、あまり会った事はない。

ジプシー・キングスも、固有名詞だから当然だろうが、ロマ・キングスと改名するそぶりもその後無かったし、第一に、そのロイヤル・アルバート・ホールでの熱演は、南フランスの保養地の路上でストリート・ミュージシャン・グループとして身を起こしたままの、いわば放浪の民の新しい世代の新しいフラメンコ・ロックの趣をむき出しにしたもので、この荒々しさと得体のしれないムードが、ヨーロッパでうけているんだな、と実感できるものだった。

ジプシー・キングス (Gipsy Kings)のイメージ2right