音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

魔女たちのジグソーパズル2 (ディープ・フォレスト) [2/3]

この曲が、日本を代表する車であるHONDAのアコードのTVCMに長い間使われ、有名な曲になっていく様を観ていると、ジプシーやボヘミアンといったある種侮蔑のこもった呼び名の背面に、憧れもまた存在する、と感じた。

ディープ・フォレスト(Deep Forest)のイメージ5

それは、音楽に限らずあらゆる芸術に対して、エスタブリッシュメントな世界…それは政治体制だったり実業だったりするが、その世界が常に持ってしまう背反するふたつの心理なのかもしれない。

多くのポップ・ミュージックの作品は、そんな確立した社会の矛盾しているとも言えるふたつの心理を想起させるが、ディープ・フォレストの『ボエム』は、特に、発表されたのが1995年で、バブル経済の崩壊の後、ITバブルと呼ばれたコンピューター・ビジネスへの投資が狂ったように始まった時期ゆえに、実社会と音楽との大きな距離、それと同時に、大きな一体感、という矛盾したふたつのものを感じさせ、印象は鮮やかなものだった。