音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

灰色ネズミの見果てぬ夢3:Danger Mouse & Norah Jones (デンジャー・マウス&ノラ・ジョーンズ)

2012.08.18

前回から続く

 デンジャー・マウスことブライアン・バートンが、相当の映画マニア、それも1950年から'60年代のヴィンテージ・イタリアンと呼ばれるイタリア映画に傾頭している人である事は、アルバム『ROME(ローマ)』一作でもよく解った。

CDジャケット表面の下方に『Starring Jack White & Norah Jones』という小さなクレジットがあり、僕は、小中学生の頃に通学の途中の道の目立つ箇所に在った映画館の看板に貼りつけてあった“上映中”を知らせる古いポスターにある“小さいけれど目立つ文字”の俳優名に、少し胸ときめかせて見入っていた経験を思い出した。

映画を観る事は、もちろん大好きだったが、映画のポスターを観るのも同じ位に好きで、ポスターは素晴らしかったのに映画はつまらなかった類の代物に何度も騙されながらも、その癖が脱けないまま、いまだポスターやアルバム・ジャケットの細部を気にしている。