音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

少年の耳3 :Jazz A Saintgerman(ジャズ・ア・サンジェルマン)

2011.12.14

 (前回から続く)

 1997年に、フランスのVirginレコードがリリースしたコンピレーション・アルバム『Jazz A Saintgermain(ジャズ・ア・サンジェルマン)』には様々な思い出がある。

様々な…といっても、思い出となる理由を凝縮すればひとつだけで…それは、数多く書いたライナーノーツの中でも、とりわけ集中し、緊張して書いた文章で、その分達成感もあり、自分でも気に入ったライナーノーツを書けたという思いがある事だろう。

レコード会社の担当ディレクターは、相当な音楽マニアで、辛らつな言葉を吐くタイプの人だったが、珍しく、電話で笑い声を混じえ「いいですね」とほめてくれた。

彼が、僕の書いた文章をほめたのは、後にも先にもそれ一回きりだから、きっと出来は良かったのだろう、と思いこんでいる。

それも、思い出となる大きな理由だ。