音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

1969.夏.冬2 :The Road To Woodstock (ウッドストックへの道)

2012.12.31

(前回から続く)

1969年が、なぜ特別な年なのか…

今から思うと、『ウッドストック』のせいでもなんでもなく、前年の'68年に僕は20歳を迎え、12月生まれであるがゆえに、その一年を新成人としてすごし、しかし、まだ大学に入って間もない時期なので、成人と言われても実感もなく、ただ、日米安保反対闘争に揺れる学校や世間に落ち着かぬ気分を抱き、ニュー・ロックやアート・ロックやジャズ・フュージョンの面白さに胸ざわつかせ、街行く人のベルボトム・ジーンズや、これまで見たことのない奇抜なファッションに、ああ、これがサブ・カルチャーとかカウンター・カルチャーとか言われているものか、と目を見開いての毎日だった。

ただ、一番目を見開いた日の事はよく覚えている。


5月の連休明けの日。

姉の年下の彼で、僕より3学年上の親友が、その日、肩まで伸びていた長髪をバッサリと切ってきた日だ。

大手新聞社へ就職するべく、一時のウッドストック・ヒッピーの如きロング・ヘアーではなくなっていたが、最終面接に近い日になり、ゼミの教授から、もっと切れ、との注意を受けたとの事。



箱根アフロディーテの野外コンサートで観たピンク・フロイドのギタリスト、デイヴ・ギルモアの風になびく長髪以上によく似合っていた長髪が、こんなにあっけなく、現在言うところのリクルート・カットになってしまうのか、と僕は呆然としてしまった。




ウッドストックのイメージ2