音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

存在の耐えられない重さ2 :Superheavy (ミック・ジャガー 後半) [5/6]

 ローリング・ストーンズの歴史で、あまりにも有名な“創業者リストラ”のエピソードだが、片倉ビルのような場所で、映画のシーンとして見せられると、若い頃にはあまり気にならなかったその事実が何倍にも印象深く伝わってきた。

映画が終わって、ビルを出た時、夕暮れが訪れた京橋の空を見上げて、しばし茫然とし、高校や大学の時の友人で、僕よりもはるかに音楽に詳しく、レコード・コレクターでもあり、気が良くて、買ったレコードや音楽雑誌を惜し気もなくすぐに貸してくれた人達の顔を、思い浮かべた。


 ローリング・ストーンズを、ビートルズと並ぶ著名で一流のバンドにする為に必死だったはずのフロントマン、ミック・ジャガーは、1969年当時、少なからず非常な男だったのだろう。

出来れば、恩師とも言えるブライアンの事は、忘れたい、そして、周囲や世間にも忘れてほしい事のひとつであっただろう。


 しかし、Superheavy(スーパーへヴィ)のサウンドを聴いていると、映画『STONED』の中にも随所で流れるインド音楽や中近東音楽の調べ、つまり、ブライアンが‘60年代後期にローリング・ストーンズに持ちこんでいた要素の幾つかが、自然ににじみ出てくる。

まさか、ミック68歳の時になって、ブライアンの影まで思い出させられるとは考えてもいなかった。

そして、ミックの若々しくファンキーでブルージーな歌声を聴き、その生命力と、音楽への情熱に感心するとともに、生き長らえるのが幸せなのか、27歳位で花と散るのが幸せなのか、なんて事を一瞬思ってしまう。


 ところで、『STONED』の試写を観た京橋の片倉ビルは、老朽化の為、2009年暮れから建て替え工事に入り、今はもうその風情漂う姿はない。

(次回へ続く ~ ジョス・ストーン)

『STONED ~
Premium Tribute To STONED』

『Their Satanic Majesties Request』

※ブライアン・ジョーンズ参加の事実上最後のローリング・ストーンズのアルバム。とてもサイケデリック。