音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

存在の耐えられない重さ2 :Superheavy (ミック・ジャガー 後半) [5/6]

 映画の中で、ブライアン・ジョーンズは、バンドの中のお荷物的存在であると同時に、ロックンロールやブルース/R&Bだけではなく、モロッコやアフリカ諸国や東洋の民族音楽にも詳しい、そして、ストーンズのメンバーの中で唯一、労働者階級の出身でなく貴族階級出身である稀有な素姓を時たまほのめかせる、しかし、憎めないモテ男として描かれている。


このブライアンの、プログレッシヴな音楽趣味、どことなく漂う気品、何よりも破天荒で傲慢な行動に、ミックとキースがずっと困り果てるのと同時に、憧れ、いや嫉妬してきた姿も匂わせるスティーヴン・ウーリー(Stephen Wooley)監督の描き方は絶妙だった。


クライマックスは、急死の1ヶ月前、’69年6月8日、ミック、キース、チャーリー・ワッツ(ドラマー)の3人が、ブライアンの住むコッチフォード牧場を訪れ、バンドを辞めるように勧告する場面だ。