音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

存在の耐えられない重さ2 :Superheavy (ミック・ジャガー 後半) [4/6]

 2006年夏に劇場公開されたが,大した話題にもならなかった映画『STONED(ストーンド)』。

これは、1969年7月3日に、プールの底に沈んで死亡していたブライアン・ジョーンズの、死の直前の数年間を主題にした映画だ。


僕は、この試写を、'06年の連休前4月26日に、東京・京橋の片倉ビル内にある映画美術学校試写室で観た。

余談中の余談になってしまうが、この片倉ビルという建物は、明治から大正にかけて、絹糸の製造で財を為し、有名な富岡製糸工場も運営していた片倉財閥が1922年に建造し、長い間、本社ビルとして使っていたもの。

平成の世になっても、単なるレトロ・ビルという以上の風情を漂わせている建物で、用も無いのに、銀座や京橋あたりに諸用で出かけたついでに、よく、眺めにたち寄った場所だ。


なにゆえ、この老ビルの中に、昭和初期から中期の立派な映画館のような試写室があるのか、その訳は全く知らないが、よりにもよって、そんな空間で、ローリング・ストーンズ創成の源であり、バンド・メンバーの誰よりも先輩であり、バンドの中で一番音楽に精通し、ついでにドラッグ全般やサブ・カルチャーにも精通し、スウィンギング・ロンドンと言われた60年代半ばのロンドン文化を象徴する・・・そして、27歳であっけなく溺死してしまった男を主人公にした映画を観る事になったのか・・・これも因縁としか云い様がない。