音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

存在の耐えられない重さ6 :Superheavy (デイヴ・スチュワート 前編) [3/3]

 逆に、1989年のオランダ映画『Lily Was Here』は、当時まだ無名の女性サックス奏者キャンディ・ダルファーのプレイをフィーチャーして、デイヴが彼女をプロデュースというよりイントロデュース(紹介)する形でサントラ盤が登場。

やはり、そのタイトル曲「」が、ヨーロッパ各国でチャートNo.1をマーク。

当然、興味をひかれたが、デイヴのプロデュースする音楽としてはいささか平凡かなぁ、と思い、その内忘れてしまっていた。

2年後、デンマークのホテルの映画サービスに、その映画が入っていて、部屋で暇だったので、日本未公開のこの映画でも観てようと思って眺めていたら…

これが、なかなか深いサスペンスで、そして、音楽の処理がまたセンス抜群!

デイヴ・スチュワートは、こんなにいい映画音楽を作っていたのか、と感心すると同時に…映画の音楽を生かすも殺すも監督しだい、特にロック系映画音楽の場合は、監督のセンスによって、その伝わり方が大きく左右されるものだ、ともうひとつ学んだわけである。

 さて、ロックからギャルズ・ポップ、ロック的スクリーン・ミュージックからSuperheavyまでプロデュースするデイヴ・スチュワート。

さぞやエネルギッシュで精力的な男かと思いきや、一度インタビューした時に受けた印象はというと…

とても静かで、体調がいつも悪そうなロック雑誌の編集者風。

あるいは、入院中の無口なヒッピー?

それには、しかし、重要な訳(わけ)があったのである。




デイヴ・スチュワート