音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

存在の耐えられない重さ5 :Superheavy (ダミアン・マーリー) [2/3]

 スーパーヘヴィというスーパー・バンドが結成されたねらいは、まさにそこにあったのかもしれない。

ミック・ジャガーやデイヴ・スチュワートは、乱暴に言ってしまえば、ダミアン・マーリーの父で、レゲエの旋風を巻き起こした故ボブ・マーリーの音楽と存在感に、70年代のリアル・タイム時、まともにショックを受けた前世代。

僕もその世代に属する。

Superheavy (ダミアン・マーリー)
Superheavy (ダミアン・マーリー)

しかし、ダミアンのファンの多くは、特に彼と同じく1978年に生まれた世代とその前後の世代は、完全にヒップホップが浸透した世代で、ダミアンを、レゲエ・アーティストのエリートというよりヒップホップ・スターとして把握している人が多い。

従って、彼らの目とか耳には、スーパーヘヴィのサウンドの、先ずキャッチーなポイントは、ミックの声でも、ミックの娘のようなジョスの声でもなく、ダミアンのラガマフィン、平たく言うと、ヒップホップ・レゲエ・ラップの声なのである。

まあ、その辺の世代間の感覚のギャップはいいとして、ミック・ジャガーやデイヴ・スチュワートが、あまり迷う事無く、また、この節珍しく、アルバムを売ろうという商業的戦略においても賭けとなるメンバー集めを、さっさとやってしまった事の方が偉大なのかもしれない。

単に、ミックが、ダミアンのファンだったから、と伝えられているが、確かに、まだほとんど人気の出ていないプリンスを、ローリング・ストーンズ全米ツアーの前座に起用して、オールド・ストーンズ・ファンがプリンスのいでたちを野次ったら、怒ってステージに出てきて「お前達は、プリンスがどんなに凄いか、一生、解らないだろう」と、なんと自分のファンをののしったミックなら、後先考えずに、ダミアンの起用を決めてしまったのだろう、と思う。

ミックの、そういう所が好きだ。

Superheavy (ダミアン・マーリー)