音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Stoned Days(ストーンした日々).Ⅲ :The Rolling Stones (ザ・ローリング・ストーンズ) [2/3]

高校生の僕がレコードを買い求める先は、故郷の町では、楽器店の傍らレコードも置いている大田垣楽器店しかなく、ロックのドーナツ盤など簡単には取り寄せてくれなかった。

しかし、さすがにピアノやオルガンまで売っている大店だったから、レコードのフロアーにはちゃんとDECCAのコーナーがあり、その中に、ストーンズの『12×5』というセカンド・アルバムが異彩を放って混じっていた事があった。

今から考えると、DECCAレーベルの発売元がまとめて輸送し、どうせ全てクラシックばかりだろうと、店の人が、整理しないでコーナーの陳列箱に入れたのだろう・・・と一瞬思ったのだが、驚くなかれ、そのストーンズのアルバムに“予約品”というシーンが貼ってあって、僕には売ってくれない・・・

ストーンズのアルバムをわざわざ注文して取り寄せる奴といえば・・・僕に「テル・ミー」のレコードを貸してくれたあの太田しかいない、と思ったが、あの同級生に今の今まで確かめた事はない。

 まあ、ビートルズという金の卵をうっかりオーディションで落としてしまったDECCAが、そのドジの穴うめにあわてて契約したのがストーンズだったおかげで、ストーンズのこの頃の楽曲カタログの管理は、ビートルズに比べれば遥かにルーズ。

おかげで、オリジナルの形には無い不思議な寄せ集め選曲のベスト・アルバムだのコンピレーション・アルバムだのが幾つか出現していて、これはこれで楽しい。