音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Stoned Days(ストーンした日々).Ⅴ :The Rolling Stones (ザ・ローリング・ストーンズ) [3/3]

 ちょうど1960年代が1970年代に交代する時期。

それ以降のR.ストーンズが、僕にとって“別物”とはいえ、それはそれで素晴らしいし、別の機会に改めて思いを記したいと思う。

だが、彼らが一番凄かったのは、まるでレコード会社のリリース・スケジュールを無視するかのように短期間に次から次へとシングル盤を発表していた1960年代の後半の一時(いっとき)。

ブルース・コードと濁った音の暴力的なギターとリズムで、世間の常識とモラルをうち壊す歌詞をたたきつけるように歌っていたあの時期、つまり、高校生の僕が『平凡パンチ』を盛んに立読みしていた、いや、させてもらっていたあの時期だろう。

 '70年代の後半、評論家の卵だった僕は、縁あって、『平凡パンチ』の音楽ページの会議に招ばれた。

そこで、あの頃、R.ストーンズは大口たたきでけしからん、とコメントしていた先輩が「パンク・ロックやインディーズ・ロックの音は、'60年代のR.ストーンズを手本にしているね。やはり、彼らは、時代を先取りしていたんだよ」といけしゃあしゃあと話していた。

うーん、まさに平凡な世間の変わり身のパンチを浴びた瞬間。メディアの図太さと嫌味とタフネスを知った時でもあった。

そんな苦くて甘い、甘くて苦い思い出と思いこみもあり、もう一度、書店『ひさや』の店頭で、『平凡パンチ』のR.ストーンズたたきの悪口記事を読んでみたい。

頭の中で、どの曲が鳴るだろう?

FMの還暦スペシャルで、制作陣に難色を示され、結局、唯一許された曲「Get Off Of My Cloud(一人ぼっちの世界)」かもしれない。