音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

赤き血と情熱の音楽?(その1)

2014.08.26

 ひとつのテーマに沿って、様々なジャンルのアーティストが寄り合いひとつひとつの楽曲を異種競演した作品を集めまとめ上げたアルバムを、コラボレーション・ショーケース・アルバムと言う。

ひとりのアーティストのある瞬間の作品集を、写真のアルバムに因んでアルバムと呼ぶようになったのは、まだ第二次大戦の事で、それとは違ったいわゆる企画アルバムの呼び名の歴史なんて、まだ一世紀にも達しない。

しかし、この頃は、単一の楽曲をデジタル・ツールにダウンロードして聴くのが大勢だから、アルバムのコンセプト、ましてや、コラボ・ショーケース・アルバムの企画が凄いだの何だのなんて話は、もはや通じない古(いにしえ)の逸話かもしれない。

 だが、最近よく聴いている『RED HOT + BACH(レッド・ホット・アンド・バッハ)』については、黙っている訳にはいかない気持ちになる。

 アルバム、という音楽の表現単位が段々と希薄になっている現在、よくぞ日本盤までリリースされた、と感心してしまう『RED HOT + BACH』は、タイトルから察しがつくように、あのヨハン・セバスティアン・バッハの著名な楽曲を、普通なら同じ場に集わない異種異域のアーティストが一緒に演奏している楽曲を集めた見事なコラボ・ショーケース・アルバムだ。