音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Stoned Days(ストーンした日々).Ⅳ :The Rolling Stones (ザ・ローリング・ストーンズ) [2/3]

 やはり、「サティスファクション(I Can't Get No Satisfaction)」という曲の出現は大きかった、と今にして思う。

 梅雨時の6月頃からニュー・シングルとして盛んにラジオでかかり始め、夏がやって来る頃、ストーンズにとって初めての全米シングル・チャートNO.1という快挙の報が伝えられた。

ラジオのゲストに出演していた木崎義二氏が「これで、ストーンズも、ライバルのビートルズと同じ様にデカいツラが出来るね」とMCしていたのが忘れられない。

いきなりアメリカでも大ブレイクしたビートルズに比べ、ストーンズの成績はそこそこで、なかなか全米NO.1シングルを生めなかった・・・


そこで、敏腕マネージャーでありプロデューサーも兼ねていたアンドリュー・ルーグ・オールダムが、全米ツアー中にテネシー州メンフィスにたち寄り、同年代の天才ソウル・シンガーでソングライターの故オーティス・レディングから、この「サティスファクション」をお金で買い取り、やっとNO.1曲を作り上げた・・・というのは周知の事実だ。

もちろん作曲者はミック・ジャガー/キース・リチャーズのコンビとクレジットされているから、相当のお金がオーティスに払われたんだろうな・・・

しかし、この楽曲売買を、無論ストーンズのメンバーも誰も公的に明かした事も認めた事もない。


ただ、'65年夏の終わりに立ち読みしていた週刊誌『平凡パンチ』の小さな記事に“これまでのストーンズには無かったタイプの画期的な曲”と、木崎氏を始めラジオでおなじみの評論家やディスク・ジョッキーのコメントがあり、“斬新なファズ・ギターの音と、「何も満足できない」、と連呼するミックの、一層黒人的な持ち味の歌いっぷりに成長を感じる”という結びで編集部記者とコメンテイター達は意見を一致させている。

しかし、記事には“ストーンズらしくない?”というニュアンスが漂っている・・・きっと、当時の音楽業界の精鋭達は、皆、噂を聞いたり、事実を知ったり、していたんだろうな。