音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Sheet Music. その3 [3/3]

買って損はしなかったと思うが、70年代の間は、どこがいいのかさっぱり判らなかったのが正直なところだ。

ただ、店で見かけた『War Babies』というタイトルが、その頃、朝日新聞のコラムで見た言葉で、つまり、第2次世界大戦終結後の3年から4年経った時に大量に生まれたベイビーたち・・・現在、団塊の世代、と呼ばれている戦後のベイビーブーマーの人たちを指している事が、なんとなく伝わってきて、なんとなく気にかかり、入手したのである。

自分自身も、まさにウォー・ベイビーのひとりであり、同級生の顔を思い浮かべても、大戦の影があるような無いような、でも幼少の頃に、まだ軍服を着てる大人を見かけて戦争の名残りを視た記憶を共通に持っているような、そんな同世代感を瞬時に感じたのかもしれない。

 ところで、僕も、御多聞にもれず、ダリルやジョンが言うのと同じくシニア・ハイスクール、つまり高校入学の時に、両親から万年筆を初めて買ってもらった。

文房具店につれていかれ、自分の手で試し書きをして選べ、と言われ、かなりの太書きのPilotを選び、「まあ、随分大きな字ですね」と店員さんに少し嘲笑されたのを覚えている。

半世紀経った今でも、万年筆売り場で、同じように少し嘲笑され、更に太書きの筆をすすめられている。(次回へ続く)