音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Sheet Music. その3 [2/3]

 ダリルもジョンも1949年の生まれ。僕は1948年だが、早生まれの同級生もいっぱいいるので、彼らの日本でのデビュー・アルバム『Daryl Hall & John Oates(サラ・スマイル)』('75年)のライナーノーツを頼まれた時、当時担当の高橋ディレクターから渡されたバイオグラフィーでそれを見て、ああ、同世代のコンビだな、と凄く親近感を覚えたものだ。

ダリルとジョンともに、スライ&ザ・ファミリー・ストーンとかジェイムス・ブラウン、テンプテーションズ、フォー・トップスといった主に60年代のソウル・スター達をフェイヴァリット・アーティストに挙げているのも見て、勝手に同世代の同好の士と思いこんだりもしていた。

RCAレコードに移籍して最初のその『サラ・スマイル』は、彼らにとって最初のメジャー・ヒットになったが、その前に所属していたAtlanticレコード時代は、いい作品を多数産みながら、まだまだ掴み切れない存在というか、よく解らない存在というか、アンダーグラウンドな存在に留まっていた。

僕が輸入盤店で、なんとなく気になって買った『War Babies(ウォー・ベイビーズ)』('74年)は、ふたりのアルバムの中で最も売れなかった作品らしいが、有名になってから後のロックとソウルの融合とかニュー・ウェイヴとR&Bの結合とか称された彼らの持ち味の原点になっていた。