音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Sheet Music. その6 [3/3]

 多分、これは、無知と偏見からくるものだったと、今では深く反省しているが、ParkerやCrossを始めとする名品が数多く存在し、特に最近、脚本家ハリー・オットー・ブリュンゼス(Harry Otto Brünjes)をキャラクターに起用したParker万年筆のCMが話題になっているので、本来の持ち運びに富んだ機能力の産物ファウンテン・ペン(万年筆)とアメリカという発明大国の結びつきに違和感を感じる方がおかしい、とは思う。

 それでも、レオン・ラッセルの、ヒッピーがカウボーイの扮装をしたような風貌と万年筆とが、どうしてもぴったりこなかったのが長年の印象だった。

少し反省し、ジョー・コッカーとマッド・ドッグス&イングリッシュメンの成功で一躍有名になったレオンが、その後たて続けに発表した自身のアルバムを聴き返してみた。

名曲「ソング・フォー・ユー」をフィーチャーした『Leon Russel(ソング・フォー・ユー)』('71年)等は、若い頃に聴いた時には気づかなかったデリカシーに気づき、ああ、この人は照れ屋で、それを隠す為に、荒くれ南部男を演じていたんだな、と正直に感じた。

そういえば、レオン自身が歌っている名曲「ソング・フォー・ユー/a Song For You」も、ジョー・コッカーの映画の中でリタ・クーリッジ(Rita Coolidge)が歌った「スーパースター(Superstar)」、後にジョージ・ベンソンの大ヒット曲となる「マスカレード/This Masquerade」、いずれも、あまり好きじゃないカーペンターズが取り上げて歌っている。

カーペンターズのヴァージョンで聴くと、美しいミュージカル・ナンバーのようだ。そして、その作曲者がレオン・ラッセル。

荒くれ男の太い指が持つ万年筆が、このメロディーを書き記すシーン・・・相当な想像力が必要だったが、今では出来そうである。(次回へ続く)