音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

赤き血と情熱の音楽?(その2) [2/3]

 後で知った事だが、2013年の初め頃から、バッハの音楽を、様々な形態で演奏する催しが、ドイツや北欧の国を中心に、盛んに行われるようになっていて、それは、オーケストラ演奏であったり、弦楽四重奏+ロック・ギタリスト、デジタル・キーボード4人+女声コーラス+バレエ・ダンサーズ、ジャズ・コンボ+チェロ奏者等、オーソドックスなものから現代風異端の試みまで、本当に様々な内容のものだ。

レッド・ホット・オーガナイゼイションの主幹のひとりであるプロデューサー、ジョン・カーリンは、いち早く、その“忘れた頃のバッハ・ブーム”を察知して『Red Hot + Bach』の企画をたて、スピーディーに制作を進めたのだろう。

いつもの事ながら、初回のコール・ポーター作品を始め、ジャズ、カントリー、ブルース、ボッサノヴァ等、その時その時の世界的な音楽トレンドを早々とキャッチし、それを企画の柱にし、エイズ患者の救済資金に結びつける才能や粘り強さや文化意識の高さには感心してしまう。

それと同時に、アルバムを制作する、という意識の高さへの我が国を始めとした大半の国の民衆の意識との温度やレベルの差にため息が出てしまう事も前回の原稿でしつこく述べたが、改めて、また、ため息がもう一度出てしまう。