音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

赤き血と情熱の音楽?(その1) [3/3]

 ところで、RED Hotとは、正式には『The RED HOT Organization』というエイズ撲滅の為の基金を集めるだけでなく、エイズ撲滅目的の様々な活動を提示したり支援する非営利団体の事である。

1990年に、ひょっとしたら当時病名の無いエイズで亡くなったのではないか、と言われているローリング・トゥエンティ(1920年代)のアメリカン・ポピュラー音楽の名作曲家コール・ポーターの名曲を、やはり様々なジャンルのアーティストのコラボで表現したアルバム『RED HOT + BLUE(レッド・ホット・アンド・ブルー)』で、少なくともポップ・ミュージック・ファンには、その存在を知らしめた。


それ以来、歴史的に重要な作曲家の作品をそのつど取り上げ、それらを、普通ではコーディネイトするのが難しい顔ぶれのアーティストをうち揃えた布陣で表現してきた。


ボサノヴァからミュージカル、カントリー、ダンス・ミュージック等、そのコンセプトは多様で、20枚近くの稀有なコラボ・コンピレーション盤を生んできたが、クラシックの作曲家をテーマにしたものは初めてだ。


 エイズを撲滅する為の著名団体の提案だから実現する企画・・・と言うのはいささか不謹慎で失礼な感想になるが、毎回、どうして通常の企画アルバムとして、こういう秀作が生まれないのだろうか、とため息が出てしまうのも事実。

もはや、大がかりなチャリティーという大義が無ければ、エンターテインメントは、特にCDアルバムは、企画として成立し得ない時代?

そういう意味で、別の、もうひとつのため息が出る。(次回へ続く)