音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Night In Tunisia(チュニジアの夜)(その2)

2015.04.23

 チャカ・カーンが全く新しい感覚でリフォームした「チュニジアの夜」は、子供の頃からぼんやりと夢想し、憧れていた北アフリカの街をかなり具体的な夢に変えてくれた。

外国の街への憧れというと、僕の世代では、先ずはニューヨークやロスアンジェルスを始めとしたアメリカ合衆国の都市への想いを抱く人が多い。

しかし、映画館へ足繁く通い、日活の無国籍映画と評された石原裕次郎や小林旭が主演する映画と、オードリー・ヘプバーンやアラン・ドロンが主演する米国映画なのか仏国映画なのか判断がつかない・・・つまり、西欧流無国籍映画との二本立、三本立という、かなり無茶な併映スタイルで作品を雑多に観ていたものだから、パリとニューヨークとチュニジアのチュニス等が、あまり区分されないまま身体と感覚の中に入ってしまったようだ。

 チャカとのインタビューでの会話でもそうだったが、主にヨーロッパのポピュラー・ミュージシャンにアフリカの事を尋ねると、チュニジアのチュニスを絶賛する人が多く、ますます僕の頭の中で、チュニジアに一度行ってみたい、といった類の憧れ幻想が膨らんでいった。

少しエスニックな風味が加わったフランス料理やイタリア料理が本場以上に美味しいとか、ジャズを中心とした音楽カフェ&ライヴハウスの洗練度が、世界のどの街よりも高いとか、様々な賛辞を聞いたものだ。