音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

ゴールデン・リングの中のネナ ① :Neneh Cherry (ネナ・チェリー) [2/3]

 しかし、それから3年、1998年の初夏、何度目かの取材訪英でやってきたロンドンの下町のレコード・ショップから、大音響で、ネナ・チェリーの「バッファロー・スタンス」が流れてきたのに出くわした時、ああ、ロンドンだなあ、と痛感する程、彼女への印象も、僕のロンドン観も、感覚も、変化していた。




 何度かロンドンを訪れる内、この街は、明治政府がお手本にしたのも日本人ならピンとくるトラッドで歴史感豊かな都会だが、反面、ニューヨーク以上に様々な人種が行き交う多人種多文化の色彩や香りが混合した街で、特にアフリカ系の人も多く住み、とてもファンキーな空気が流れている事に気づき始めていたのである。