音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

ジョージのRellowな世界 ① :George Harrison (ジョージ・ハリスン) [2/3]

 正直少し困惑したが、カントリー&ウエスタンを全く知らない訳ではなし、と開き直り、高校生の時に、ちょうど来日したカントリーの大物バック・オーウェンズ&バッカルーズの公演ライヴを放送していたラジオ番組を思い出し、オーウェンズの名曲「アクト・ナチュラリー/Act Naturally」をリンゴ・スターに歌うようにすすめたのもジョージだった事が記憶の中で蘇り、そして、ソロ・アルバム『オール・シングス・マスト・パス』の中の曲「イフ・ノット・フォー・ユー/If Not For You」が頭の中で鳴り出したのである。

 この曲は、ビートルズ末期から交遊を深めていたボブ・ディランとジョージが共作した美しいメロディの作品で、もう一曲、ふたりが共作した同アルバム中の「アイド・ハヴ・ユー・エニイタイム/I'd Have You Anytime」とともにカントリーやカントリー・ブルース、ポップ・カントリーの味わいを備えた曲だ。

オール・シングス・マスト・パス』といえば、ジョージの名を、ビートルズ時代以上に知らしめた「マイ・スウィート・ロード/My Sweet Lord」や「美しき人生/What Is Life」等の大ヒット・シングル曲が有名だが、僕は、ディランとの共作曲二曲に最初から惹かれた。

高校の同級生で、ボブ・ディランの熱心なファンの井藤クンが、板橋区の下宿で、この二曲を盛んに聴かせ「ディランは本当に優秀なメロディメーカーだ! これからはカントリーだぜ」と、当たっているような、当たっていないような熱弁解説を吐いていた記憶も大きく働いた。


 いずれにしろ、ロック中のカントリーというと、僕にとっては、ジョージの「イフ・ナット・フォー・ユー」であり、この曲を核にして、我ながらいささか独断の選曲をして番組に臨んだが、果たしてカントリー番組に新しい風は吹いたのだろうか?

長時間の特番で、僕の出番は早朝3時頃だったので、べつに反響も無かったが、カントリー・ファンからの苦情も来なかった。