音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Fame. その37 [2/2]

そこで注意して他のジャケットも見てみると、アルバム『Mezzanine(メザニーン)』の黒いザリ蟹の如き絵や、『Collected(コレクティッド)』の時の、黒い未知の花とも宇宙人ともつかぬ物体も、先ず、紙を切ったり折ったりして下絵を作っていったように想われる。

 いささか大袈裟だが、この時、紙の凄さと恐ろしさと美しさを知った気持ちになった。

 この節は、ペイパーレスが推奨される時代だ。紙は重ばって、オフィスや部屋を占拠する、なんで今時紙の書類やら記録やらを使うんだ? SNSで動画や音楽を世界中に自己発信する時代だよ、まして原稿や企画書を紙に手書きで? と苛つく御仁が主流にして大多数。

僕は、そんな人達を、秘かにデジタンキ(デジタル短気)と呼び、自分を(デジ呑気)と呼んでいる。

音楽も、月極値のストリーミングでまとめて聴き、配信販売で、買って気に入らなければタッチひとつで消去するのが主流だ。

CDで聴くなんて…とは言うものの、ストリームで気に入った曲の元レコードを探し、ネットにアナログLPでもあろうものならすぐ購入という人も増えてきたとも聞く。

理由は、見栄えが良いから、だって。やはり、レコード・ジャケットをほしい人もいるんだな。不思議なデジタル心理である。

 心臓だか胃だかをを患ったミック・ジャガーだが、医師の診断書の裏に鉛筆か何かで新しい歌詞を書いているかもしれない。

最近、ブルーのボトルのディオールの新しい香水のテレビCMに、ローリング・ストーンズの「シーズ・ア・レインボウ」が流れていた。

今夜は、アナログLPであの曲を聴こう。

(今回もタイトルに借用したのは、マッシヴ・アタック'94年の『プロテクション』中の曲名でした)