音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Fame. その3 [2/2]

 ボウイがJ・レノンと親交を持つようになったきっかけは、その'75年春先のグラミー賞授賞式後のパーティーの席での事。

ハリウッドでのパーティーだったそうだが、J・レノンはその時「俺はニューヨークに住んでいるけど、君は映画にも精通しているし、ロックのシンガーより映画スターに向いているかもしれないから、このハリウッドに移住した方がいいんじゃないか?」と話したそうだ。

本当にジョンがそんな事を言ったのかどうか・・・一度ボウイに確かめたいと思っていたが、'86年のロンドンで、ジュリアン・テンプル監督の映画『ビギナーズ/Absolute Beginners』の公開試写会と共同記者会見があり、その席にボウイが登場すると伝えられていたので、なんとかひとつでも質問したいと待ちうけていたが、ボウイが現われず、果たせなかった。

 セックス・ピストルズのドキュメンタリー映画『グレイト・ロックン・ロール・スウィンドル』で知られるJ・テンプル監督は、ローリング・ストーンズやボウイ等のビデオ・クリップでも名作を数多く手懸け、そんな彼の初めての本格的な劇場映画のお披露目だから、タイトル曲も歌い、映画では、とてもいやらしい企業家の役で出演もしているボウイの、せめて顔でも間近に見たい、と意気込んでいたので、今でも、残念でならない。

その内、会う機会もまたやって来るだろう、と思っていたら、レノンもボウイも逝ってしまった。同じニューヨークで。(次回へ続く)