音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Fame. その23 [2/2]

鈴木先生は、映画全編に流れる50年代末のジャズのアレンジや作曲を担当しているギル・エヴァンスの専門家だから「僕は、デイヴ・ブルーベックの“テイク・ファイブ”とザ・ピーナッツの歌しか記憶にないんですが…なにしろ1958年は、まだ小学校4年生でしたから」とか言いながら、厚かましく、知らない事を尋ね、教えてもらっていた。

これじゃ、本当に小学校4年生の時のままだぜ…と、ふと隣を見ると、なんとレイ・デイヴィスが、レセプションに押しかけたストラングラーズのヒュウ・コンウェルや、ザ・スタイル・カウンシルのポール・ウェラーと談笑しているではないか!

そのうえ、微笑しながらこちらにやって来た。

「君、どこから来たの?日本人?」「は、は、はい。日本の音楽ジャーナリストです。あなた、キ、キ、キンクスのレイですよね?」「へぇ―っ、キンクスを知ってるの?」「ええ、毎日聴いてました」「そう。じゃ学校で苦労しただろ?」「はい」。

 これだけの会話で、まさか会えるとは思ってなかったキンクスのレイへのインタビュー(?)は終わった。

緊張とはこういうものだろうか?絶対緊張を知った僕は、まさに絶対初心者(アブサルート・ビギナー)だった。(文中、一部を除き敬称略。次回へ続く