音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Fame. その12 [2/2]

     

スタッフの間で“クズ・テープ”と呼ばれていた『レット・イット・ビー』がビードルズ最後の名作になり、最後のドキュメンタリー映画のサウンドトラックになったのだから、ビートルズもプロデューサー達も大したモノだが、一役買ったフィル・スペクターの伝記映画がもし実現する事があったなら、ボウイにスペクターの役をやってほしかった、と今では叶わぬ夢をよく見る。

 そのビートルズの、アメリカ進出直後のハリウッド・ボウルでのライヴ映像とか、『エイト・デイズ・ウィーク』等、それこそ、彼らが現役時には“クズ・テープ”として扱われ、倉庫でほこりを被っていた代物が、今頃になって一押し商品化され、いたる所にデカい広告板が建っているのだから、文化、とりわけポップスの世界は、死して名を残せばゴミは宝となる、の好例なのだろう。

 日本のSMAPはどうなのだろう、と皮肉な事を考えていたら、ボウイの、俳優としての初演映画『地球に落ちてきた男』(1975年)のオリジナル・サウンドトラックの音源が発見され、今年(2016年)の11月に世界的にリリースされるという報せが突然入った。

 そんな事は忘れていたが、ボウイがシンガー/アーティストとして出演している訳でもなく、100%俳優に徹している話題ばかりで、多分地味なインストゥルメンタル曲が全面をうめるサウンドトラック等発売しなくていいという判断で、どこかの倉庫に眠っていたのだろう。

ボウイの、意外に早い死亡、が無かったら、出遭う事のなかった幻のサウンドトラック盤。少し悲しい気持ちで聴く事になりそうだ。(次回へ続く)