音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Fame. その6 [2/2]

             

 そんな僕の連想が通じた訳ではもちろんないが、ボウイは、『ヤング・アメリカンズ』以来のソウル/ダンス・アルバム『レッツ・ダンス』('83年)のジャケットで、ボクサーの扮装をしている。

「レッツ・ダンス」や「モダン・ラヴ」といったクラブ・ヒットを生んで、ボウイのアルバムの中で最大のセールスを記録したらしいが、僕は、このアルバムの中の「チャイナ・ガール/China Girl」という曲が好きで、現在でも頻繁に聴く。

 いかにもヨーロッパ人がイメージする中国らしいギター・リフで始まるこの曲は、ボウイが親友のイギー・ポップ(Iggy Pop)に頼まれてプロデュースをひき受けたイギーのアルバム『イディオット/The Idiot』('77年)に先に収められていた共作曲。

イギーの方がオリジナルと見なすべき経緯で、実際、パンク・ロックの元祖中の元祖と言われて久しいイギーらしい歌詞が描く屈折した情感が魅力だが、ボウイとの共作でなければ生まれなかったであろう“僕は時たまマーロン・ブランドのようになる。あまりに僕が興奮すると僕のチャイナ・ガールは、落ち着いて、シー、口を閉じて、と言うんだ”という歌詞フレーズがとても印象的だ。

ボウイも、プライベートでは、モハメド・アリになったり、名優マーロン・ブランドになったりして、大声を出し、近しい人からたしなめられていたのかもしれない。(以下、次回へ続く)