音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

星色のカオス3 (デペッシュ・モード : Depeche Mode) [2/3]

 もっと古い曲を頭中で鳴らすのか、と思っていたら、僕が無意識に選んでいたのは、比較的近年の曲で、それに驚かされもしたし、初期から漠然と感じていた伝統性のようなものを、彼らの楽曲に、改めて発見するいいきっかけになったような気もする。

特に、アルバム『プレイング・ジ・エンジェル』(2005年)の中の「ア・ペイン・ザット・アイム・ユースト・トゥ」「ザ・ダーケスト・スター」、そして、「ナッシングズ・インポッシブル」といった曲…
あるいは、アルバム『ウルトラ』(1997年)の中の「ザ・ラヴ・シーヴス/The Love Thieves」「シスター・オブ・ザ・ナイト」

マーティン・ゴアの14年ぶりのセカンド・ソロ・アルバムで、やはりカヴァー・トラック集だった『Counterfeit2(カウンターフィート2)』中の、ドイツの作曲家クルト・ヴァイルの作品「ロスト・イン・ザ・スターズ」、ブライアン・イーノの作品「バイ・ディス・リヴァー/By This River」、デヴィッド・リンチ監督の映像作品の音楽でおなじみの女性歌手ジュリー・クルーズの「イン・マイ・アザー・ワールド」…などが、『白鳥の湖』を観ている間、まるでもうひとつのサウンドトラックス・ループのように鳴り続けて頭の中を巡っているのは、とても貴重な体験だった。