音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

星色のカオス1 (デペッシュ・モード : Depeche Mode) [3/3]

デペッシュ・モードのイメージ5

半ば予想はしていたが、ニュー・ウェイヴの曲をまとめてどーんと聴きたいリスナーには大変に不評で「髪をテクノ・カットにして心を入れかえろ!」といった葉書や手紙をよく頂いた。

 しかし、その後も心を入れかえる事なく、もう1/4世紀も経つ。


デペッシュ・モードの核となっているのは、マーティン・リー・ゴア(Martin Lee Gore)が主に書く楽曲であり、意外な位にシンプルで親しみ易いメロディーに乗ったとても個人的な歌詞の鋭さや美しさにある…そして、それを表現するにあたって、デヴィッド・ガーンのありそうでなかなかない声や歌い方は欠かせないものだ、という考えは、今も、変わらない。

 1987年に、取材でロンドンに行った時、ホテルのTVでMTVを流していたのだが、彼らの「Never Let Me Down Again」のビデオ・クリップの映像に引きつけられた。

デペッシュ・モードのイメージ6

特別に凝った映像ではないが、モノクロのトーンと展開は、この曲の歌詞が持つ“最愛の友人(もしくは愛人)との一度壊れた関係を修復する為に旅に出よう”という希望と絶望と期待がいり混じった不安定な気分を見事に表現していて、今でも、特別に好きなクリップのひとつだ。

白と黒だけで装っても、とてもカラフルな印象を与えるファッションのようなデペッシュ・モードの音楽。

この時、彼らは、明らかに最先端に居た。

(次回へ続く)

Music for the Masses