灰色ネズミの見果てぬ夢1 :Danger Mouse (デンジャー・マウス)[2/3]
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誰でも知っている名前という訳ではないと言ったが、デンジャー・マウスこと本名ブライアン・バートンは、現在最も注目されているプロデューサー/アーティスト。 ゴリラズのセカンド・アルバム『ディーモン・デイズ』(2005年)をプロデュースして、新世代のロック・ファンのみならずオールド・ロック・ファンをも感嘆させたが、その後も、シー・ローとかベックとか一(ひと)クセも二(ふた)クセもあるアーティストと組んだり、プロデュースしたり、自由奔放な音楽を作り出している鬼才だ。 僕が、この“危ないネズミ”に最初に驚かされたのは、2004年に発表したリミックス・ミュージック・アルバム『ザ・グレイ・アルバム』でだった。 ブラック・シーンの人気アーティスト、ジェイZ(ジー)の『ザ・ブラック・アルバム』と、あのビートルズ後期の傑作アルバム『ザ・ホワイト・アルバム』の両素材を組み合わせて、超現代的でありながらレトロなソウル&ロックを作り出して…その名も『ザ・グレイ・アルバム』! 案の定、ビートルズの発売元のEMIを怒らせて、出荷停止命令が下ったが、あまりの出来の良さと面白さに評判が拡がり、いまだブートレッグ(海賊盤)が出回って、ベスト・セラー中。史上稀なる“灰色の傑作”だ。 こんな事して只ですむと思うか?と生まれてから何百回と言われているであろうデンジャー・マウスだが、ヒップホップやビートルズ以上に好きなのが、1960年代から'70年代にかけてのイタリア映画のサウンドトラックだという。 そこで、近年、何度か一緒に仕事をしたダニエル・ルッピを誘って、架空のイタリア映画のサウンドトラック作りを計画した…それが『ローマ』である。 そのダニエル・ルッピも、TVドラマのヒット・シリーズ『セックス&ザ・シティ』のサウンドトラック他、最近のハリウッド映画でトップクラスの売れっ子作曲家/編曲家である。 当然ながら、映画好きで、60年代末あたりのイタリア映画に影響された自身を素直に表現した『An Italian Story』(2004年)というソロ・アルバムまで発表している。 |