音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

灰色ネズミの見果てぬ夢1 :Danger Mouse (デンジャー・マウス)

2012.06.29

 デンジャー・マウスとダニエル・ルッピ(Danger Mouse & Daniel Luppi)が組んだアルバム『ローマ/ROME』が発表されてから、かれこれ一年以上たつ。

NHK-FMの放送で、このアルバムの中から、ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)のヴォーカルをフィーチャーした「ブラック/Black」という曲を紹介した時「気が早いけど、このアルバムは、今年(2011年)のベスト・アルバム最有力候補です」と無責任なコメントをして失笑された。

だが、一年以上たって、まだこの『ローマ』を頻繁に聴いているところをみると、僕の発言は、少なくとも僕自身に対しては、無責任ではなく、僕は相当『ローマ』を気に入っている事は確かだ。


 アルバム『ローマ』は、2000年代に入ってからのアメリカのポップ/ロック・シーンが生んだ数少ないスター・アーティストであるノラ・ジョーンズとジャック・ホワイト(ホワイト・ストライプス)という二人のヴォーカリストをフィーチャーした曲が何曲か入っているとはいえ、全体に地味なインストゥルメンタル・アルバムで、衆目を一身に集める類のアルバムではない。

メイン・アーティスト二人の名前も、誰でも知っている名前という訳でもない。

それでも、このCD不況の中、日本も含めての世界各国で発表されたからには、やはり、何か大きな魅力がある、と思っている訳である。