音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

少年の耳1 :Dave Brubeck (デイヴ・ブルーベック) [3/3]

 5/4拍子なんていう変拍子が一般うけ狙いの商策だとしたら、一体何が通好みなのか、僕には解らない。

「Take Five」のかっこ良さは、前回連載のテーマであった50年代末のビギナーズのチャレンジ精神と時代を変えようとする情熱と、逆にそれらをぐっと内包させて知的に醒めた頭脳と技術で高度なレベルに挑むジャズ本来の姿勢、つまり、クールなパフォーマンスが、全てつまった所にあったと思う。

僕のような少年が、ジャズだのポップだのロックだの、凡そカテゴリーやつまらないルールにとらわれなくなった大きな原因となった曲…それだけで、画期的な曲、という理由に十分である。



 80年代後半、武田薬品の栄養ドリンク「アリナミンV」のCFに「Take Five」が流れ、かっこ良さを再認識させられたが、映像タイアップも何もからみの無い時代にスマッシュ・ヒットし、その後50年余も生き続けている曲…

この曲をモーツアルトに聴かせたかったと何度も思う。(次回へ続く)