音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

少年の耳1 :Dave Brubeck (デイヴ・ブルーベック)

2011.10.01

 デイヴ・ブルーベック(Dave Brubeck)は、カリフォルニア州コンコードに1920年12月6日に生まれている。

現在(2011年8月)、91歳の高齢になるが、すこぶる元気で、この夏にも、1957年にディズニー映画の中の名曲をジャズにリフォームした名作『Dave Digs Disney(デイヴ・ディグス・ディズニー)』の新たなCDリマスター・プラス・未発表曲の新装盤を自から編集スタジオに入って指揮し、ニュー・アルバムとして発表したばかりだ。

立ち合ったディレクターやエンジニアによると、凄い記憶力とスタミナで、半世紀余前のレコーディングだったのに、録音した曲順や、アレンジの際のカルテットのメンバーとの会話や口論等、刻明に覚えているそうだ。

そして、当時の録音技術や仕上げでは成り立たない音の微妙な部分への不満もしっかりと頭に在って、エンジニアに次々と指摘し、それを確める作業を続けたという。



自分の作品に対して思い入れを持つのは当たり前だが、ここまでくると、思い入れというより執着心とか責任感のレベルのものさえ感じさせられる。

アーティストたるもの、その位の“しつこさ”を自作品に対して持つのは当然の事かもしれない。

しかし、現実には、大半のアーティストは、そんな事を忘れてしまっている。

あるいは、忘れさせられてしまっている。

デイヴは、『ディグス・ディズニー』に続いて、1959年に発表した名盤中の名盤『Time Out(タイム・アウト)』の完全リニューアル盤の編集に着手しているという。

『Time Out』といえば、ジャズ史上空前の大ヒット曲「Take Five(テイク・ファイヴ)」が収録されているアルバムだ。