音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

ブルーにこんがらがって3 :WHAM (ワム)[3/3]

 品川駅は、現在のように新幹線の乗降駅としても機能してメガ・ターミナルになる前から、東海道と京浜を分け結ぶ独特のターミナルで、東京駅や上野駅のムードとも異なる駅だった。

生前の父が出張してくる時、駅構内のコーヒー・スタンドで、短かい乗り換え時間によく会ったものだ。

そのコーヒー・スタンドで、'84年のある日、見知らぬ男に名前を呼ばれた。

しばらく訳が解らなかったが、中学一年生の時に、関西の都会から転校生として同じクラスにやってきた巽クン(タツミクン)だと判明。

ソフトボールの下手投げで変化球を2種類投げられる名手で、僕をキャッチャーにして鍛えてくれた。

ポップスにも詳しく、ポール・アンカやデル・シャノンを教えてくれたのも彼だが、すぐまた転校して都会に帰って以来、消息は判らなかった。

そんな旧友とも出くわした品川で、あのずっと気にかかる曲と遭遇したも、もう30年近く前。

 六本木のステージで輝いて立つドン・ウォズは、そんな事何も知らず微笑んでいる。

WHAMの「哀愁のメキシコ」の事を覚えているのだろうか?
ひょっとしたら、WHAM版の自身の曲の事も忘れているかな?

いつか聞いてみよう。出来れば品川駅で。