音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

ブルーにこんがらがって1 :Don Was (ドン・ウォズ) [3/3]

 しかし、それが日本人特有の、ジャズはこうあるべきで、ロックやカントリーやソウルはまた別のあるべき形式や姿が存在する、といったカテゴリー重視学究主義の観方ゆえの驚きだったり、戸惑いなのかもしれない。

ドン・ウォズは、半ば冗談、半ば真剣に、ジャズの大老舗の新しい看板をどうペインティングするか、そのスリルを楽しんでいるだけかもしれない。

今まで、あまり姿を晒す事がなく、このコンベンションの日も、体調がすぐれず、約束していた数多くのインタビューの予定を全てキャンセルしたとかで、ずいぶん気難しい男かと想像していたが、ビルボード東京のステージに挨拶に現われた彼は、ヒゲとカウボーイ・ファッションがよく似合うにこやかな男。

体調がすぐれないというのもジョークだったのか、と想わせる温厚さだった。



 ドン・ウォズが世に出てきたのは1980年。

ミシガン州のデトロイトに生まれたドナルド・フェイグソン(ドン)が、従兄弟のデヴィッド・ウェイス(デヴィッド・ウォズ)を誘って、ファンキーでソウルフルな兄弟ユニットWAS(Not Wasの意味)(ウォズ兄弟、いや、そうじゃないかも?)を結成し、ニューヨークの実験的な新興レーベル、ZEレコード(ゼットイー)からデビューしたのが最初だ。

ドンはデトロイトに、デヴィッドはニューヨークに住み、電話で相談しながら曲を作る架空の兄弟、しかも白人なのに黒人のようなサウンドというのが、当時の僕には、とても面白く写った。

その時から、ブルーにこんがらがった音楽観に、知らぬ間に、もの凄く影響を受けていたのかもしれない!?

(次回へ続く)