音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

熱いのは夏のせい2 … (ビギナーズ : Absolute Beginners) [2/3]

ジャズは、言うまでもなくアメリカの産物だが、1950年代には、本国アメリカでは、まだアンダーグラウンドなもので、ジャズの名門ブルー・ノート・レーベルがドイツで産まれたのに象徴されるが、先に、ヨーロッパのいくつかの大都市で人気を得てメジャー化した軌跡がある。

巨星マイルス・デイヴィスも、フランスのヌーベル・ヴァーグ映画の若き監督に頼まれ、『死刑台のエレベーター』を始めとする作品でトランペットを吹き、実質的な知名度を高めたのだ。

 マイルスを始め多くのジャズ・スターと共演し、ヨーロッパ・ツアーの経験も豊かなギル・エヴァンスの感覚は、ニューヨークでもシカゴでもない1958年のロンドンの“アメリカからやって来たヒップで先端を行くかっこいいモノ”としてのジャズ…

そのジャズが、イタリア移民やジャマイカ移民が持ち込んだカンツォーネやレゲエやカリプソと結びついて、ロンドンの下町で、どのように発酵したり 変質したりして独得の味を醸し出そうとしていたか…

そのビギナーの味を鮮やかに作り出している。